クリプトデイリー 2026-09-06

金融庁が暗号資産・ステーブルコイン施策を「目標達成」と自己評価/Trezorの物流委託先での情報漏洩が約6万7,000人に拡大/AMCがロビンフッドに株式トークンの取引停止を要求し拒否される。今日の3本です。

今日は「制度が動く前の役所の自己採点」「買った先の情報が漏れる話」「株のトークンをめぐる対立」の3本です。1本目は税金の話につながる予定表、2本目は自分の住所や電話番号の扱いの話で、どちらも相場とは別のところで効いてくる材料だと思います。

1. 金融庁、暗号資産・ステーブルコイン施策を「目標達成」と自己評価

金融庁が9月4日、「令和7年度実績評価書」を公表しました。デジタル金融分野の施策について、報じられているところでは全7指標が目標を達成したという自己評価になっています。評価書では、暗号資産(仮想通貨)の税制について、現行の総合課税(所得税・住民税を合わせて最高55%)から「申告分離課税(税率20%程度)」への移行と、損失の3年間繰越控除を盛り込む方針が示されました。実施時期は、金商法改正の「施行が2027年度の場合、課税の変更は2028年1月1日からとなる見込み」とされています。このほか、改正資金決済法が2026年6月に施行されたこと、3メガバンク(みずほ・三菱UFJ・三井住友)による円建てステーブルコインの共同発行で100万円の送金上限が撤廃され米ドル建ても視野に入っていること、2025年6月から12月にかけて「金融庁AI官民フォーラム」を開催したことが挙げられています。

出典: CoinPost / CoinDesk Japan(NADA NEWS)

ひとこと(Jura) — 自己評価そのものより、書かれている日付のほうを覚えておくといいと思います。税率が変わるとしても2028年1月1日からという「見込み」で、しかも金商法改正の施行が2027年度だった場合という条件つきですね。いま持っているぶんの申告は現行の総合課税のままなので、制度が変わる前提で今年の計算を省略しないほうがいいと思います。

2. Trezorの物流委託先での情報漏洩、対象が新たに約6万7,000人に拡大

ハードウェアウォレット大手のTrezorが、物流パートナーのShipMonkで起きたデータ侵害について、新たに約6万7,000人の米国の顧客の情報漏洩が確認されたと公表しました。当初の説明では約1万3,700人でした。漏洩した情報に含まれるのは「氏名、メールアドレス、電話番号、配送先住所、注文番号」で、対象は2019年11月から2021年8月の注文データです。TrezorはShipMonkとの間で90日のデータ保持ポリシーを設定していましたが、実際にはシップモンクのシステムにデータが残っていたと説明しています。同社は対象顧客に直接メールで連絡したうえで、漏洩した情報が詐欺に悪用される可能性があること、物理的なリスクにも注意することを呼びかけています。

出典: CoinPost

ひとこと(Jura) — 秘密鍵が漏れたわけではないのに怖いのは、漏れたのが「誰がハードウェアウォレットを買ったか」という名簿と住所だからですね。ウォレットの中身は無事でも、その人を狙う側にとっては十分な情報になります。この手の名簿が出たあとは、メーカーを名乗るメールで復元フレーズの入力を求める偽サイトへの誘導が典型的な手口なので、リカバリーフレーズはどんな画面にも打ち込まない、という一点だけは崩さないでおきたいところです。あと、保持しないと決めていたデータが委託先に残っていた、という構図も覚えておくといいと思います。

3. AMCがロビンフッドに株式トークンの取引停止を要求、ロビンフッドは拒否

米映画館大手AMCエンターテインメント・ホールディングスのアダム・アロンCEOが9月3日、同社が承認していないAMC株式トークンの取引停止をロビンフッドに要求し、ロビンフッドがこれを拒否したことで両社の対立が表面化しました。争点になっている株式トークンは、購入者が実際の株式を持つのではなく、対象となる株式の値動きに応じて価格が上下するトークンを取引する仕組みで、配当なども商品価格に反映されますが、議決権など株主としての権利は得られません。アロンCEOはこれを「未登録証券」と非難し、自社の関与や承認を得ずに自社株を模した金融商品が提供されていること、米国の証券法に基づいて登録されていないことを問題視しています。ロビンフッド側は、トークンはジャージー島法人の「ロビンフッド・アセッツ・ジャージー・リミテッド」が発行する「トークン化された債務証券」であり、米国人を除く120カ国超の対象者に提供していると位置づけています。最高法務責任者のダン・ギャラガー氏は「係争になればロビンフッド側の主張が通る」との見解を示し、CEOのヴラッド・テネフ氏は「われわれは株式トークンを支持する」と表明しました。なお、日本、カナダ、英国、スイス、UAE、制裁対象国では取引が制限されています。

出典: CoinDesk Japan(NADA NEWS) / CoinPost

ひとこと(Jura) — 日本からは取引できない商品の話ですが、構造は知っておく価値があると思います。「株のトークン」と呼ばれていても、中身は発行体の債務証券で、株主としての権利は付いてこない。つまり値動きは追えても、議決権も所有権もないという設計ですね。名前が指しているものと、法的に何を買っているのかがずれる商品は今後も出てくるはずなので、呼び名ではなく発行体と権利の中身を見る癖をつけておきたいところです。

当記事は情報提供を目的としており、特定の暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。 取引には価格変動・流動性・システム障害等のリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。 記事内容は執筆時点の情報に基づきます。