基礎知識

トラベルルールとは|暗号資産を送れない相手先がある理由と、送る前の確認順

暗号資産の送付時に受取人の情報を求められ、送れない取引所がある理由を、金融庁・JVCEAの資料とCoincheck・GMOコイン・bitbankの公式案内で整理します。送付先の区分と、送る前に確認する順番まで。

机の上で宛名欄の空いた封筒と、行き先ごとに分かれた案内板の模型、確認用の書類が並ぶ落ち着いた場面
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トラベルルールは、交換業者が暗号資産を送るときに送付人と受取人の情報を相手の交換業者へ伝える義務で、伝えられない相手には送れないため、送付先の一覧に載っていない取引所があります。

確認日: 2026年10月26日。この記事は金融庁・日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の公表資料と、Coincheck・GMOコイン・bitbankの公式ヘルプやお知らせの記載を対象とし、取引所や銘柄の優劣、価格の見通しは扱いません。

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1. 先に知っておく制約:一覧にない相手へは送れない

仕組みの説明より先に、利用者側でできないことを確認します。送付先として選べない取引所に対して、入力を工夫して送る方法は用意されていません。

Coincheckは、トラベルルールへの対応により同社から送金できる外部事業者は制限されているとし、送金先登録時の「サービス名」リストに表示されない事業者へは送金できないと案内しています。2025年7月9日以降は「上記以外の取引所又はサービス」を選んで送金先を登録することもできなくなったと説明しています。

bitbankも2025年7月31日のお知らせで、2025年8月1日から「取引所・サービス」の選択肢には直接送付が可能な交換業者のみを表示し、一覧にない交換業者は選択できず送付もできないとしています。「その他(自由入力)」欄に交換業者名を手入力した場合は、一律で送付不可になると案内しています。

つまり、送れるかどうかは送付元の交換業者が決めた一覧で判断され、その一覧は会社ごとに違います。乗り換えや資産の移動を考えるときは、送付元の一覧に送付先の名前があるかを最初に見ます。

出典: Coincheck:希望する外部の取引所へ暗号資産を送金できません。なぜですか?、bitbank:暗号資産の送付先指定方法の変更について(2025年8月1日より適用)

2. トラベルルールの中身:何を、誰に伝える義務か

制度の根拠は犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)で、2023年6月1日に施行された改正で導入されました。

金融庁は、取引経路を追跡できるようにするため、交換業者に対して暗号資産の移転時に送付人・受取人の情報を通知する義務を新設したと説明しています。同庁の資料では、国内の交換業者への移転と、外国の交換業者への移転が対象とされ、金額や種類にかかわらず全ての移転が対象とされています。

区分 通知する主な事項(自然人の場合)
送付人の情報 氏名、住居または顧客識別番号等、ブロックチェーンアドレスまたはそれを特定できる番号
受取人の情報 氏名、ブロックチェーンアドレスまたはそれを特定できる番号

bitbankは、この制度がFATF(金融活動作業部会)の国際基準で各国の規制当局に導入が求められているもので、犯罪者が電子的な資金移転を自由に使うことを防ぎ、不正利用があった場合に追跡を可能にすることが目的だと説明しています。

送金の画面で受取人の氏名や本人かどうかを尋ねられるのは、この通知事項をそろえるためです。送金そのものの流れは暗号資産の送金の仕組みで扱っています。

出典: 金融庁:暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)(PDF)、金融庁:改正資金決済法等に係る政令・内閣府令案等の公表結果(2023年5月26日)、bitbank:トラベルルールへの追加対応と利用規約に関する重要なお知らせ

3. 送付先は3つの区分に分かれる

通知が必要かどうかは、送付先の種類で決まります。区分ごとに、交換業者に求められることが違います。

送付先がどこかで、通知の要否と送れるかどうかが分かれます。国内の交換業者から送付を申請する金額や銘柄にかかわらず、受取人の情報を登録するA 国内の交換業者・指定法域の外国業者送付人・受取人情報の通知が必要B 自分で管理するウォレット等通知は不要、所有者情報を集めるC 対象外の国・地域の業者・無登録業者通知は不要、所有者情報を集める送付先一覧に表示される?表示されない相手へは送れない交換業者の審査や確認を経て扱いが決まる受付の範囲と入力の方法は交換業者ごとに異なる※ 指定法域の一覧は金融庁・財務省の告示で定められ、改正されることがあります。※ 通知に使う仕組みが交換業者どうしで合わない場合も、送付先として選べないことがあります。
送付先の区分と扱いの流れ。送れる相手は交換業者ごとに異なり、変わることがある。最終的な可否は、利用している交換業者の送付先一覧と公式ヘルプで確認する。

国内の交換業者と、指定法域の外国業者。 JVCEAは、送付先が金融庁の告示で指定する法域の当局からライセンス登録を受けた交換業者である場合、移転と同時もしくは事前に通知事項を移転先へ通知する必要があると説明しています。国内の他の交換業者への移転も含まれます。

自分で管理するウォレット等。 金融庁の資料は、事業者が管理していないウォレットを「アンホステッド・ウォレット」と呼び、こうしたウォレットとの取引についても交換業者に所有者情報の収集・保存を求めるとしています。JVCEAも、移転先への通知は不要としつつ、会員に情報収集義務が課されると説明しています。ウォレットの種類はウォレットの選び方で整理しています。

通知義務の対象外の国・地域の業者や、無登録業者。 金融庁は、通知先の国・地域の法制度が整っていなければ通知の実効性に欠けることなどから、対象を日本の通知義務に相当する規制がある国・地域の外国業者への移転に限るとしています。2026年7月の資料では、中国、ベトナム、ロシアは現時点で対象外と記載されています。これらの送付先についても所有者情報の収集・保存が求められます。

指定法域の告示は改正が続いています。金融庁は2026年7月7日、指定法域を見直す告示を公布し、2026年8月3日から適用すると公表しました。告示の改正文では、アンギラ、オマーン、キューバ、ドミニカ国、ボツワナが加えられています。送付先の国・地域が対象かどうかは、その時点の告示で変わります。

出典: JVCEA:トラベルルール対応についてのお知らせ(2023年3月22日)、金融庁:トラベルルール対象法域の告示改正(2026年7月7日)、金融庁:コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(PDF)

4. 国内の取引所どうしでも送れない場合がある理由

国内の登録業者どうしなら必ず送れる、というわけではありません。通知には交換業者が採用するシステムを使うため、システムどうしの相性も影響します。

JVCEAは、各会員が採用するシステムによって通知が可能な交換業者が異なるため、利用者は各会員のホームページ等で随時確認する必要があるとしています。会員からの案内は段階的に、複数回にわたって行われる可能性があるとも説明しています。

GMOコインは2023年5月26日のお知らせ(2023年5月31日時点の情報)で、送付できない宛先として、同社と異なるトラベルルール対応ソリューションを採用している国内交換業者や、通知事項を通知できない国内業者などを挙げていました。そのうえで、相互通知の体制が整えば送付可能になる場合があるとし、上記に当てはまらない場合でも同社の審査により送付を断ることがあると案内しています。現在の対象は同社の公式ヘルプで確認します。

送付先の交換業者が金融庁に登録されているかどうかは、暗号資産交換業者の登録の確認方法の手順で別に調べられます。

出典: JVCEA:トラベルルール対応についてのお知らせ(2023年3月22日)、GMOコイン:トラベルルールについてよくあるご質問

5. 受け取る側でも確認が行われる

トラベルルールは送る側だけの話ではありません。受け取る側の交換業者も、届いた情報を照合します。

GMOコインは同じお知らせで、預入の際は送付元に関する情報を預入のたびに登録するとし、事前登録は不要と説明しています。一方で、送付元に心当たりがなく誤送付と判断される場合や、通知された情報と登録情報が異なる場合、送付元アドレスが規制当局により違法サービス等として指定されている場合などには、口座への反映を断ることがあると案内しています。

Coincheckは受取人情報の登録について、送金先が「Coincheck」で受取人が「本人(自分)」になっていないかを確認するよう注意を促し、入力内容に誤りがあると審査や送金完了までに時間を要する場合があるとしています。登録後に編集できない項目を直すには、送金先を登録し直す必要があると説明しています。

入力した情報は受取側で照合される前提で、事実どおりに入力します。

出典: GMOコイン:トラベルルールについてよくあるご質問、Coincheck:暗号資産送金時の「受取人情報」の登録方法

6. 送る前に確認する順番

最後に、ここまでの内容を確認の順番に並べます。上から順に見ると、送れない相手に気づくのが早くなります。

  1. 送付元の交換業者の送付先一覧に、送りたい取引所やサービスの名前があるか
  2. 送付先が交換業者か、自分で管理するウォレットか、それ以外の事業者か
  3. 受取人が本人か、本人以外の個人・法人か(本人以外の場合は氏名や住所の国・地域などを求められる)
  4. 送付先の交換業者が、受け取りの際に追加の確認を求めていないか

Coincheckは受取人種別で本人以外を選んだ場合、個人なら受取人氏名(カナ)と住所(国・地域)、法人なら法人名(カナ)と住所(国・地域)の入力が必要だと案内しています。bitbankは2022年9月29日から、受取人が本人の場合は出金の目的、本人以外の場合は出金の目的と受取人の住所が必要になる場合があるとしています。

口座がまだない場合は、Coincheckの始め方、GMOコインの始め方、bitbankの始め方で本人確認からの流れを確認できます。

次に確認することは、いま使っている交換業者の公式ヘルプで「送付先として選べる取引所の一覧」を開き、移動先の候補が含まれるかを先に調べることです。

出典

当記事は情報提供を目的としており、特定の暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。 取引には価格変動・流動性・システム障害等のリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。 記事内容は執筆時点の情報に基づきます。手数料・サービス内容の最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。