暗号資産の分離課税20%はいつから?|決まったこと・まだ決まっていないことを国税庁と金融庁の資料で整理
暗号資産の申告分離課税(20%)がいつから始まるかを、国税庁・財務省・金融庁の資料で整理します。法律で決まったこと、施行日待ちで未定のこと、対象になる「特定暗号資産」の条件と、2026年分の申告が今までどおりになる理由まで。

暗号資産の一部を20%の申告分離課税にする改正は2026年3月の法律で決まりましたが、始まるのは金融商品取引法等の改正法の施行日の翌年1月1日で、その施行日がまだ定まっていないため、開始の年は2027年か2028年のどちらかまでしか言えません。
確認日: 2026年10月31日。この記事は国税庁・財務省・金融庁が公表した資料の記載を対象とし、個人(居住者)の所得税の扱いの大枠だけを扱います。税額の試算や、取引のタイミングの判断、銘柄や取引所の優劣は扱いません。
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1. 先に結論:決まったことと、まだ決まっていないこと
最初に、法律として決まった部分と、これから政令などで決まる部分を分けます。報道や解説では「2028年から」と書かれることがありますが、それは施行日についての見込みを含んだ表現です。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 決定済み | 特定暗号資産の譲渡による所得を20%(所得税15%・個人住民税5%)の申告分離課税にする。損失は翌年以後3年間繰り越せる | 所得税法等の改正法(2026年3月31日公布) |
| 決定済み | 暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す | 金融商品取引法等の改正法(2026年7月15日成立、7月23日公布) |
| 決定済み | 適用開始日は「金商法等の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日」 | 国税庁の改正のあらまし |
| 未定 | 金商法等の改正法の施行日(暗号資産の規制の移管を含む原則部分) | 政令で定める日(公布から1年以内) |
| 未定 | 特定暗号資産の範囲の細部、業者の報告書や投資信託の扱いの詳細 | 今後の政令・内閣府令など |
国税庁の「改正のあらまし」は、特定暗号資産の譲渡による所得について20%の申告分離課税の対象とされ、控除しきれない損失は一定の要件の下で翌年以後3年間繰り越せるようになったと説明しています。一方で、適用時期は金融商品取引法等の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日(適用開始日)とし、その法律は同資料の作成時点(2026年5月1日)では未成立と書いています。
出典: 国税庁:令和8年度 個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の改正のあらまし(PDF)
2. 開始の年が「2027年か2028年」までしか言えない理由
開始の年は、税の法律ではなく、金融商品取引法等の改正法の施行日で決まります。その施行日の決まり方を順に見ます。
金融庁が国会に提出した法律案の要綱では、この法律は原則として「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行するとされています。法律は2026年7月23日に公布されたので、原則部分の施行日は2027年7月22日までのどこかになります。施行日が2026年中なら適用開始日は2027年1月1日、2027年中なら2028年1月1日です。
一部の規定はすでに施行されています。金融庁は、無登録業に対する罰則の引上げなどの規定が、公布から20日を経過した2026年8月12日に施行されると公表しました。ただし、これは暗号資産の規制の移管や税制の適用開始を決める原則部分とは別の規定です。
確認日時点で、原則部分の施行日を定める政令の公布は、金融庁の報道発表資料に見当たりません。どちらの年になるかは、政令の公布を待つことになります。
出典: 金融庁:国会提出法案(第221回国会)、金融庁:法律案要綱(PDF)、金融庁:令和8年金融商品取引法等改正(20日後施行)に係る政令の公布について
3. 2026年分の申告は今までどおり
適用開始日は早くても2027年1月1日です。そのため、2026年中の取引による所得は、どちらの場合も現行の扱いで申告します。
現行では、暗号資産の売却などで生じた利益は原則として雑所得に区分され、給与などほかの所得と合計して税額を計算する総合課税です。申告が必要かどうかの考え方は仮想通貨の税金の基本、所得金額の計算は確定申告の計算方法、取引所から届く資料は年間取引報告書の取得方法で整理しています。
4. 分離課税の対象になるのは「特定暗号資産」を業者経由で手放した場合
改正後も、すべての暗号資産の取引が分離課税になるわけではありません。対象には条件があります。
国税庁の資料では、対象は金融商品取引業者登録簿に登録されている一定の暗号資産など(特定暗号資産)で、その譲渡は「暗号資産取引業者への売委託により行うもの又は暗号資産取引業者に対するもの」に限るとされています。条件に当てはまらない譲渡は、総合課税のままです。
総合課税のまま残る暗号資産の扱いも変わります。営利を目的として継続的に譲渡する場合を除き、「譲渡所得の基因となる暗号資産」として譲渡所得で計算することとされ、譲渡所得の特別控除はなく、長期保有の2分の1の措置も適用されません。損失は、ほかの総合課税の所得と損益通算できないとされています。
もう1点、適用時期の書き方にも注意します。国税庁は、分離課税と繰越控除の改正は適用開始日以後に行う特定暗号資産の譲渡について適用されると説明しています。適用開始日より前の年に生じた損失を繰り越せるとは書かれていません。
出典: 国税庁:令和8年度 個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の改正のあらまし(PDF)
5. 大綱には書かれ、細部がこれから決まること
2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱には、分離課税のほかにも暗号資産に関する項目があります。いずれも、金融商品取引法等の改正を前提とした項目です。
- 業者からの報告書: 暗号資産取引業を行う者は、特定暗号資産の取引を行った人の氏名・住所・個人番号や取引の内容を記載した報告書を、翌年1月31日までに税務署長へ提出する。適用開始日の属する年の翌年1月1日以後の取引から
- デリバティブ取引: 特定暗号資産に係る暗号資産デリバティブ取引の雑所得等を、先物取引の課税の特例と損失の繰越控除の対象に加える
- 投資信託: 投資信託及び投資法人に関する法律施行令の改正を前提に、特定暗号資産を投資の対象とする投資信託の受益権を一般株式等の範囲に加える
前提となる金融商品取引法等の改正法そのものは、暗号資産について、発行者や業者による情報の公表、事故が生じた場合の顧客への補償原資となる責任準備金の積み立ての義務付け、インサイダー取引規制、登録を受けない業者が登録業者の取り扱っていない暗号資産等を売り付けた場合の売買契約を原則として無効とする規定などを含んでいます。利用者への影響の細部は、今後の政令・内閣府令で示されます。
出典: 財務省:令和8年度税制改正の大綱(PDF)、金融庁:法律案要綱(PDF)
6. いま確認しておくこと
制度が始まる前でもできる確認があります。上から順に見ると、改正の発表があったときに自分に関係するかを判断しやすくなります。
- 2026年分の取引は現行の扱いで計算する前提で、年間取引報告書などの資料をそろえる
- 使っている取引所が金融庁に登録された業者かを確かめる(分離課税の対象は業者を通じた譲渡に限られる)
- 業者を通さない取引(個人間の受け渡しなど)があるかを把握しておく
- 金融庁の報道発表で、施行日を定める政令と内閣府令の公表を確認する
登録業者かどうかは暗号資産交換業者の登録の確認方法で調べられます。口座がまだない場合の手順は、Coincheckの始め方、GMOコインの始め方、bitbankの始め方で確認できます。
個別の取引が対象になるか、税額がどうなるかは、税務署や税理士に確認してください。
次に確認することは、金融庁の報道発表資料で、金融商品取引法等の改正法の施行日を定める政令が公表されたかどうかです。公表されれば、適用開始日が2027年1月1日か2028年1月1日かが決まります。
出典
- 国税庁:令和8年度 個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の改正のあらまし(PDF) — 所得税法等の改正法(2026年3月31日公布)、特定暗号資産の20%の申告分離課税、3年間の繰越控除、総合課税の暗号資産の扱い、適用開始日の定め。
- 財務省:令和8年度税制改正の大綱(PDF) — 2025年12月26日閣議決定。業者の報告書、デリバティブ取引、投資信託、適用時期の注記。
- 財務省:令和9年度税制改正要望(金融庁)改正金融商品取引法等の施行に伴う所要の措置(PDF) — 改正法の成立(2026年7月15日)と公布(同月23日)。
- 金融庁:国会提出法案(第221回国会) — 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律の提出日と成立日、概要・要綱。
- 金融庁:法律案要綱(PDF) — 暗号資産の情報公表・業規制・不公正取引規制の項目と、施行期日。
- 金融庁:令和8年金融商品取引法等改正(20日後施行)に係る政令の公布について — 無登録業に対する罰則の引上げなどの2026年8月12日施行。